朝ごはんの前だったり朝ご飯後だったりコーヒーが飲みたくなる。インスタントコーヒーを卒業して豆からドリップで飲みだしたのは確か高校生だったように思う。あれからもう50年になる。豆から挽いた粉を買ってきてドリップした時のあの香りを今も忘れない。
大学生になると喫茶店(今のようなcafeとは少し違ってて)に通うようになる。この昭和の時代は個人経営の喫茶店がたくさんあった。スタバもコメダなかった時代。大学の坂の下に新たに喫茶店ノアがオープンした。オープニングスタッフをお願いされた縁でしばらくスタッフののちバイトを後輩に譲り毎日授業の合間に客として通うようになる。当時マイカップのキープがあった。丸みを帯び飲み口がぶ厚い黄色いカップはママさんからのプレゼントだった。コーヒーの香りに誘われ「常連だよ」ってステータスにひびいて毎日通ったのだろう。今から思えば薄っぺらいマウントで思い出し思わず失笑してしまう。ママさんや大人の常連さんとの会話のやりとりも若輩学生の社会への学びにはなっていた。
3回生になると車に乗るようになってロードサイドの喫茶店に入るようになる。今は車屋になっているが膳所の国道一号にオレンジのアメリカンスタイルの小屋風のJILLという喫茶店があった。全席J字のカウンターは銅板張りで正面の壁には牛の一頭分の革にメニューが掲げられていた。オーナーのNさん兄弟はメガネのお兄ちゃんと小太りの弟がどちらか居て加えて背の高いSさんかテクノカットのKさんがカウンター内でサービスしていた。のれんの向こうの厨房には表にはほとんど出てこないスタッフがトーストを焼いたりタンバルライスと呼ばれていた薄切り牛肉ののっかった牛めしを作ったりしていたようである。ここには午前と夜と一日二回通うようになった。アメリカンコーヒーが売りのおしゃれな店だった。客層はファッション雑誌JJから抜け出したような若者と町中のお商売屋さんの社長たちが常連で会話を楽しみながら薄めのコーヒーも楽しんでいた。JILLのアメリカンコーヒーにはよその店にはないものが添えてある。それはレモンスライス‼レモンティーならぬレモンコーヒーである。これが癖になる。 つづく

コメント