おいしいコーヒーを淹れる 3

 サークルを辞めたとたん、時間があふれ出した。それまでサークル命だったから自分の時間のほぼすべてをそこに割いていたものだから時間がたっぷり生まれたのだ。家庭教師のバイトにBBC放送局近くの住宅に家庭教師に週2回行っていた。そこへ向かう竜が丘の急な坂を上ると右手に喫茶コロンボがあった。滋賀にはあまりなかったロココ調のインテリアで揃えら、什器にもお金がかけられていた。初めて店に入りボックス席に座り窓の外を眺めると窓の外を雨の日のように水がガラスを伝っていた。こんな仕掛けは当時はホテルのロービーで見かけたことがあるくらいでいいお天気の日でもそこに座るといつも雨のような気分になった。小林麻美の「雨音はショパンの調べ」を聴くとその光景が浮かんでばかりいた。行きつけになった後、しばらくバイトに入ることをそれまでのバイトに加えた。そこでドリップコーヒーの淹れ方を学んだ。レッドブラウンの大きなミルで大きな音とともに挽いた豆で一杯ずつ入れるコーヒーは贅沢だった。先の細い銅製のポットで湯を注ぐと粉が膨れ上がってくる美しさに見とれていた。坂をさらに上ったところにあった短大の学生はお客さんとしてあまり来なかった。わざわざ立ち寄らなくても国道を越え京阪膳所駅から浜へ向かうときめき坂にはお店がどんどんでき、西武大津店にもパンタグラフやうまいコーヒーを飲ませる店もたくさんあった。喫茶コロンボの経営者は不動産屋さんで、雇われ店長とバイトに任せている店にそれほどのこだわりも人を惹きつける魅力も薄かったのかもしれない。持て余すばかりの時間をやり過ごすにはちょうど良い時間の費やし方だったように思う。半年ほどバイトしていたが家庭教師からの帰りに瀬田で起こした交通事故でそれまでの違反点数に加算され3か月の免停になり聴聞により講習を受けても一か月運転できない状況になり毎日バイトに入れることができなくなりやめることとなる。 つづく

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